アメリカ・日本の大学の「英語」教育の違い

筆者はアメリカの大学で教員をしていますが、今から数年前、一度だけ日本の大学の英文科で
も授業を担当させていただく機会がありました。アメリカと日本の「英語」の授業は当然なが
らまったく違うものになります。その違いをまとめてみます。

アメリカの大学での「英語」の授業=論理的思考を養い、文章としてアウトプットする場
アメリカの「英語」の授業は、英語が第一言語であろうが第二言語であろうが基本的に 1年時
の必修で、エッセイ(論文)を書く修練の場を提供するものです。クラスの人数は12-14人
ほどに抑えられていますが、どのような国籍構成になるかは学期によって変わります。1コー
スは1学期、つまり3か月14週間ほどで完結し、その期間内に35回ほどの授業と、学生さん1
人につき6回ほどの個人面談があります。

授業はすべて英語で行い、おおよそ次のようなプロセスを頻繁に繰り返します。

1.あるテーマに沿った複数の読み物の分析やディスカッションを行う。
2.自分の見解をまとめて一定の枠組みに沿ってエッセイを下書き(ドラフティング)していく。
3. そのドラフトをクラスメートや教員がレビューして、修正してもらい、最終稿まで質を高め
ていく。

学生さんはだいたい1000ワードのペーパーのドラフトを2、3日で書くことが要求されています。
日本の大学の英語の卒業論文ワンドラフトくらいの分量を約2週間くらいごとに何回もアウトプ
ットしてもらうことになります。

日本の大学での「英語」の授業=英語を使うやる気と自信をつける場

自分が受け持った日本の大学の授業の対象は第2学年の英文科専攻の学生さんたち。数人の留学
生以外はほぼすべて日本人で、クラスの規模は20人ほどでした。先生方のご要望は、アメリカ
式の教授法で、英語で教え、400ワードレベルのエッセイをいくつか書けるようにしてもらいた
い、というものでした。

しかし、実際に学生さんにお会いしてみて、みなさん英語に苦手意識があり、日本語で教えて
ほしいというご希望もうかがえ、また、授業に出ること自体が一仕事という印象でした。そこ
で大幅に軌道修正し英語に親しみをもってもらうのが主な教育目標となりました。そこでとっ
たアプローチは次のようなものです。

  1. 最初は読み物から入るのではなく、ご自分の経験をテーマにしました。また、いきなり
    エッセイから入らず、まずは、ワンパラグラフで完結する短い文章を、少しずつ書ける
    ようにもっていく。  
  2. 読み物のディスカッションは、日本語で少しずつ英文読解を行う。   
  3. 英文作成時には、調査の上で学生さんの使えそうな文の型や表現をいくつか用意して、
    まずは「借文」を試みてもらうよう仕向ける。   
  4. エッセイに入ってもワンパラグラフずつドラフティングすることにしました。結果、400
    ワードくらいのエッセイひとつにつき半年くらいかけたことになります。

課題が遅れがちな学生さんに対しては、個別にメールをして、なんとか次に間に合うようにフ
ィードバックやスケジューリング調整をし、またペアワークを導入することで参加する意欲を
もたせ、全員の足並みがそろうように心掛けました。

日米の大学を単純に比較する意味はあまりないですが、今後、同世代の学生さんの間で国内志
向・国外志向が両極化していき、同じ「英語」と言ってもその学習ニーズの違いがどんどん拡
大していっている状況には留意すべきかと思います。